G-SHOCKの裏蓋

 以前、清掃してベゼルとバンドを交換したG-SHOCK G-100-3BMJFですが、Oリングが当たる

部分の裏蓋に腐食があり、どうしたものかと考えていました。

 

数日後、そうだ!研磨しちゃえ!と思い立ち、砥石で水研ぎしてしまいました。

 

腐食がかなり進行したひどい部分を除いてキレイになった・・・?何か忘れてないか?・・・

あっ!これ、不動態化処理してるかも?・・・。あー、物理研磨して不動態皮膜を削っちゃった

・・・やっちゃった・・・。

 

物理研磨しちゃったので、自然に出来る不動態被膜しかない状態。普通では錆びませんが非常に

膜厚が薄いので(一説によると数Åから数nm程度)、今の状態では特に海水・汗などの塩分(塩化

物イオン)が凝縮すると簡単に腐食(孔食)してしまう状態。

汗などが隙間に浸透して乾燥し・・・を繰り返すだけでも不動態被膜が破壊されて腐食してしまい

ます。ちょうどOリングが当たるあたりですね。今の腐食部分もまさしくこの部分です。

 

充分な耐食性を与えるには不動態化処理という処理が必要。一般的には30%濃度の硝酸に浸漬し

たりするのですが、その前に電解研磨を行うと効果的らしいです。

 

ステンレスの不動態被膜は組成中のクロムの酸化膜と一般的に言われています。

電解研磨を行うことでステンレス表面のクロム濃度が上がり、それが酸化して厚い不動態被膜

(酸化クロム)となり、表面も平滑化されます。

 

電解研磨のみでもある程度の厚さの不動態被膜ができて耐食性が向上するのですが、さらに耐食

性を向上させるには不動態化処理という事をを行います。

電解研磨して表面のクロム濃度を上げ(クロムリッチにして)、そのうえで不動態化処理を行うと

さらに不動態被膜が厚くなって耐食性がより向上します。

 

とはいえ処理液に使う硝酸とか硫酸とか、購入するには面倒な手続き(手続き自体はハンコを押す

だけだろうけど、まず「怪しい者じゃありません」から始まり、使用用途の説明とか爆弾などの

材料として使わないとか、対面での説明がすごく面倒)が必要なので、よい方法がないかとネット

で探し回ります。

 

探し回った結果、毒劇物を使用しない方法がありました。

電解研磨液としてエチレングリコール(不凍液の主成分)と塩化ナトリウム(食塩)を使用する方法が

研究報告として見つかりました。使用後の電解液も有害物質を含まないという優れもの。

 

不動態化処理は、処理液として過酸化水素水を使用する方法が見つかりました。電解研磨後でし

か有効な不動態被膜ができないという制限がありますが、濃度は3.5%で良さそうで、これは薬局

で売っているオキシドールそのもの。

 

エチレングリコールは毒劇物に該当しないので通販で、オキシドールと精製水は近所のドラッグ

ストアで購入。

電極のステンレス板とガラス容器(電解槽として使用)はホームセンターで、計量カップとステンレス

線(電解研磨時に使用)は100円ショップで購入。

塩化ナトリウムはいわゆる食塩なのでキッチンにあるし。

 

で、G-SHOCKのステンレス裏蓋を電解研磨&不動態化処理しました。

裏蓋の内面にはアラームとか時報とかの時に鳴る圧電ブザーがありますので、その部分はカプト

ンテープでマスキング。

ネットでの情報にしたがって電解研磨をおこない、水洗いしたあと過酸化水素水に2時間浸漬。

そして水洗い&カプトンテープを剥がして脱脂して乾燥。

 

電解研磨で過研磨気味になってしまいましたが、電解研磨らしい光沢も得られて不動態化処理も

できました。

試料となるものがなく、電流密度や電極との距離、処理時間などのパラメータ出しが出来ずに

一発勝負だったのですが、出来は悪いながらも目的達成といった感じです。

 

ちゃんと不動態被膜が出来ているかは孔食電位とやらを測定しなければいけませんが、これは

ミクロな破壊検査(孔食という腐食が始まる電位の測定)だし、面倒ということもあり省略。

 

深く腐食して陥没した部分は物理研磨でも錆が取れませんでしたが、電解研磨を行うことで錆も

取れてピカピカに。

 

プロがやるようにキレイには出来ませんでしたが、耐食性向上のための電解研磨&不動態化処理な

ので、多少研磨面が曇っていても良しとしました(本当はOリングとの当たりが悪いので良くないけど)。

 

 なにより入手が面倒で管理も気を使う、廃棄時の処理も面倒な毒劇物を使った電解液ではなく、

容易に入手可能なものを使って使用後の処理も簡単な(有害物質を含まない)電解液で電解研磨&不動

態化処理ができるという大きな収穫がありました。

 

 新品の裏蓋部分のOリングも購入して届いたので、交換。裏蓋をしっかり脱脂・乾燥させてから

シリコングリスを塗布したOリングをケースの溝に載せて裏蓋を4本のねじで締め、G-SHOCKを組み

直し。

無事終了となりました。

 

これで電池交換まで心配せずにガンガン使えます。